【完】さつきあめ〜2nd〜
「光も…朝日も何も悪くないよ…。
どうしてさくらは……。
さくらは弱いしずるいよ…。死んでしまうなんてやっぱり逃げていたとしか思えない」

綾の言葉は
綾がさくらと仲が良かったからこそ出る言葉で
あの頃さくらが亡くなって苦しんでいたのなら、こいつだって同じなのだから。

「どうしようもないとか、あの時はこういう選択しか出来なかったとか色々と思うところはあるんだけど…
仕方がなかった…あの時の自分にはこういう選択しか出来なかったって事って案外多いんじゃないかな…。
今の自分ならって後悔する事もあるけど…その瞬間は精一杯だったんだって…
それでも、悔やむ事が多すぎるしな」

あの時さくらの気持ちをもっと信じれたなら。
言葉にしなくても、俺に信じる気持ちがあったのなら、やっぱり未来は変わっていたと思うんだ。
けれど今を生きる俺たちは未来を変える事は出来ない。悲しいくらい無力だ。
そんな後悔ばかりの生き方の中で、後悔を明日へ持ち越さない事を教えてくれた女がいたな。

だから俺はここにいる。
ここにいて、自分はどうして生まれたのかだとか、生きていて良かったのか、なんて知りたがっている自分がいる。
ずっとそれを引きずったまま生きていたのなら、憎しみや悲しみに押しつぶされそうだったから。
だからそこに期待していた答えがなくとも、受け入れて生きていかなきゃいけないと思ったんだ。

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