【完】さつきあめ〜2nd〜

レイはビールまでジョッキで頼んで、それを美味しそうに一気に飲み干す。
こんなに豪快で、無邪気な人だったのだろうか。シーズンズ時代はナンバーを争っていただけで、プライベートで飲みに行くことなんかなかったし、仲良く世間話をするような仲でもなかった。
だから正直彼女の本質という部分は知らずにいた。
でも驚く事に美味しそうにご飯を食べる彼女を前に、わたしは自分でもびっくりするくらい食欲がわいていた。
元気で明るい人の側にいるとこんなにも影響されるのかと思う程、何を食べても味がしなかったのが嘘のように、いいだけお肉を食べた後、ライスまでぺろりとたいらげた。

あの頃は色恋営業で、それも魅力のひとつだと思っていた。
でも今はまた違う魅力がレイには感じられた。双葉で若くもない層の人間が彼女を可愛がる理由がわかった。
本当に人と人は深く知らないとわからない事ばかりだ。

「さくらちゃん…全然小食じゃないんだね」

「あ、なんか今日はすごくご飯が美味しい、てゆーかレイさんが美味しそうに食べるの見て…こんなにご飯食べるの久しぶりだよ」

「痩せてる人ほどご飯食べるもんなぁ~!
でも美味しいね!ほんっとこんなんじゃあ痩せられなーい!彼氏出来ないよ~!」

笑いながらそう言うレイに、少しの疑問を投げかけた。

「レイさんは……沢村さんの事が本当に好きじゃないの?」

わたしの問いかけに、レイはビールをぶっと吹き出した。

「だからさっきも言ったじゃぁーん!沢村さんはそういうんじゃないよ!
それにレイってそんなに惚れっぽくないんだからね」

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