壊れそうなほど。
(7)

……ウソをついてしまった。

今さらこんなウソ1つ、反省してもなんの意味もないけれど。

「ごめん。外ステ終わったら、多分バンドで打ち上げするから」

夜食事しようと言った啓吾に、わたしはそう言った。でも今日は打ち上げなんてしない。

「あー、だよな。明日の夜もきっとM研で打ち上げするだろうし……じゃあ、また来週かな」

物分りがよくて助かる、と思うわたしは最低だ。

別に、啓吾を避けたわけではない。罪悪感に苦しむほど、わたしはいい子ではない。そもそも、わたしがいい子なら、こんなことになっていない。

うん、最低。

だって、ユキと一緒にいたくてウソをついた。

こんなんじゃ、もう──。


ふいに、啓吾のお母さんの笑顔が浮かんだ。

『沙奈ちゃんがお嫁に来てくれるなんて、ほんとに嬉しいわ』

……あーあ、どうしよ。
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