私たちの六年目
苦しそうに言った秀哉の言葉に、チクンと胸の奥が痛くなった。


「どうして俺はずっと一方通行なんだろう。

大学の時も……。

今も……」


大学時代、梨華には片想いをしている准教授がいた。


その人は独身だったけど、遠距離恋愛中の恋人がいたから、どんなに梨華がアプローチしたところで、梨華の気持ちに応えることは出来なかった。


だけど、遠距離恋愛で寂しい思いをしている教授は、いつもどこか隙のある人で。


自分にもチャンスがあるのでは?という思いが、梨華はどうしても拭い切れない。


そんな感じだから、梨華は大学を卒業するまでの四年間、ずっと教授のことだけを見ていたのだ。


「教授と少し話せただけで、幸せそうに笑うアイツを見てきたし。

届かない思いを抱えて苦しむアイツも、ずっと見てきたよ……」


「うん……」


「そんなにつらいなら俺にしとけって、何度も言いそうになったし。

実際そう伝えたけど、ダメで……。

こんなに好きなのに……。

俺なら絶対大切にするのに……。

それなのに、なんで二番目でもいいなんて。

そんな悲しいことを言うんだよ……っ」
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