私たちの六年目
「何しに来たの……?」


梨華が険しい顔で尋ねた。


おそらくひどく警戒しているのだろう。


たった一人でここに来た私のことを……。


「秀哉と別れろって言いに来たの?」


察しの良い梨華。


それなら話は早いかもしれない。


「菜穂って、大学入学当時から秀哉のことが好きだったんでしょう?」


梨華の言葉に、私はゆっくりと頷いた。


そうだよ。


殺陣部に入部した初日。


新入生が一人一人自己紹介をしたあの時。


秀哉の綺麗な横顔に目を奪われたの。


仲良くなっていくうちに、秀哉の優しさや人柄にどんどん惹かれていって。


気づいたら、走り出した思いはもう止められなかった。


でも、それとほぼ同じ時期に、秀哉は梨華に惹かれていた。


私が秀哉を思うのと同じくらいの強い気持ちで。


あの時から、私達の一方通行は始まっていたんだ……。


「たとえそうだとしても、もうダメだから。

だって私と秀哉は婚約したんだもの。

私の両親にも会わせてあるし、もうすぐ入籍するんだから」


必死に訴える梨華。


梨華がそう言うだろうということはわかっていたから、私はいたって冷静だった。
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