私たちの六年目
教授に4年間も片想いしていた梨華。


傷つくたびに、私のところに来て泣いていたっけ。


恋人がいる相手なんてやめておけば?って何度言っても。


全然言うことを聞いてはくれなかった。


一途で一生懸命なところ。


繊細で、壊れてしまいそうなところ。


危なっかしくて、ほうっておけないところ。


私にはない魅力を、梨華は沢山持っていて。


そんな梨華を、秀哉は好きで。


梨華を思う秀哉を、私はずっと見てきたんだ。


「梨華」


『ん?』


「私がこんなことを言っても、聞かないとは思うけどさ」


どんなに好きでも。


幸せを感じていたとしても。


「私は……。

梨華に不倫をやめてほしいって思ってるよ……」


梨華が、その関係を割り切っていることはわかっている。


でも、やっぱり。


友達として、そんな恋を応援することは出来ないから。


『うん、菜穂はそう言うと思ってたよ』


わかっているのに、それでも電話をかけて来たんだよね。


叱られてもいいから、私の声が聞きたかったのかな……。
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