私たちの六年目
梨華の問いに、大きく頷く秀哉。


「ありがと。ありがとう……っ」


梨華はそう言って、嬉しそうに涙を流した。


私の目の前で繋がった二人の手が、さっきよりも強く繋がれている。


その光景を見ていたら、胸の奥にズキンと痛みが走った。


「なんかビックリさせられっぱなしだけど。

とりあえず、良かったんだよな?

梨華は子供を産むことが出来るし、秀哉は長年の片想いが実ったんだろう?」


「そ、そうよね。めでたいわよね。

だったら早速、乾杯しましょうよ。

今夜はお祝いよ!

あ、でも、梨華は飲んじゃダメよ。

烏龍茶でも飲んでなさい」


郁未にそう言われて、梨華ははにかみながら「はい」と小さく返事をした。


「菜穂ー。ビール4つと烏龍茶を頼んでくれる? 菜穂?」


私の目の前にあるタッチパネル。


だけど、私はそれに手を伸ばす気力なんてなかった。


梨華と秀哉が結婚する。


そんな日が来るなんて、思いもしていなかった。


恋人がいる男性を好きになる梨華。


そんな梨華を思い続ける秀哉。


そして、秀哉を好きな私。


もう5年以上も、この一方通行が続いていた。


もういい加減、この一方通行を終わらせたいって。


そう思っていたけれど。


まさか、こんな形で終わりを迎えるなんて。


そんなの。


納得なんて出来るはずがない……!
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