私たちの六年目
「ねぇ、聞かせて。

秀哉のことが好き?」


私と同じくらい、秀哉のことが好き?


誰よりも、何よりも……。


「違うよね?

友達として好きなだけでしょう?」


その程度の思いなら、やめて。


秀哉の手を取らないで……!


そう願うけど。


梨華は一度深呼吸をすると、ゆっくりと話し始めた。


「確かに今までは、秀哉のことを友達としてしか見てなかった。

でも、これからは……。

それ以上の感情を持てると思う。

きっと、そうなれる。

こんなにも長く、私のことを思ってくれた秀哉だから……」


「何それ……?」


そんな不確かな思いで、秀哉と結婚するつもりなの?


「わかってるよ。

秀哉の好意に甘えようとしている自分はずるいって。

でも、これが私なの。

私は、弱い人間だから……。

本当にごめん。

ごめんなさい……」


そう言うと、梨華ははらはらと涙を流した。


どれだけ泣いても、綺麗でいられる梨華。


どうしてこんな美しい子がいるんだろう。


あまりに儚くて綺麗だから。


梨華を責めている私の方が、悪いことをしている気分になるよ……。
< 93 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop