ビターのちスイート
そうやって照れくさそうに笑う陸斗を見て、杏奈の心にポツンと小さなシミが出来た。
「陸斗くんはさすがだね。ちゃんと莉子のことわかってる」
「ま、産まれたときから知ってるしな」
いわゆる幼馴染の関係の陸斗と莉子は、杏奈が近くで見ていても、お互いのことを理解している。
「高梨はわかってると思うけど、結構俺たちもぶつかることあるんだぞ」
「うん、知ってるよ。でも、ちゃんとその場で話し合うから、ほとんどケンカにはなってないことも知ってる。ホントに仲がいいなあっていうのが伝わるもん」
「そうは言うけど、高梨とユキのほうが仲はいいんじゃないか?」
突如自分たちのことを言われて、杏奈はキョトンとなる。
「ユキが忙しくて構ってやれなくても、高梨は理解してくれてるってこの間豪語してたからさ」
陸斗の言葉に杏奈は顔を歪めそうになったが、一瞬で心に蓋をし、平静を装って陸斗に聞き返す。
「……あ、そう。っていうか、陸斗くん、幸弘と会ったの?」
「ああ。十日くらい前だったかな?」
陸斗のその言葉に、杏奈の目の前は真っ暗になる。
彼女と会う時間はないくせに、友達と会う時間は作れたんだ。
このまま陸斗と話していると、自分の気持ちが外に溢れてきそうになる。