ビターのちスイート

「……ありがとうございます!」

女の子ふたりの明るい声が重なって、杏奈の顔にも笑顔が浮かぶ。

ふたりがレジに並ぶのを見届けると、杏奈はレジスタッフへ一言彼女たちが予約商品をすでに手にしていることを告げる。

そして店内に目を向けると、ほんの少し目を丸くさせた陸斗と目が合った。

陸斗は何か話したそうな顔をしていたが、杏奈は敢えて、陸斗から目線を外した。

これ以上陸斗と話したら、杏奈の本音が伝わりそうな気がしていたからだ。

そんな杏奈の気持ちに気づいたのか、陸斗はそれ以上は何も言わず、莉子への贈り物を購入して店を後にする。

杏奈はそんな陸斗の後ろ姿を見送り、再び接客へと戻って行った。





杏奈の勤務時間が少し過ぎた頃、川崎が近づいてきて、杏奈の肩をポン、と叩いた。

「高梨、今日は定時でちゃんと上がれ。飛行機間に合わなかったら大変だろう」

「すみません、店長。本当なら最後までいて売り上げ確認とかしなくちゃいけなかったのに」

忙しい時期には残業をして、店の事務作業を手伝っている杏奈。母からの誘いがなかったら、今日もそのつもりでいたため、申し訳なく思い頭を下げる。

「何言ってるんだ。勤務時間しっかり働いてくれてるんだから、気にせず楽しんでこい」

「そうよ、杏奈ちゃん」

「亜依子さん!」
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