没落貴族の娘なので、医者として生活費を稼いでいます！
「無礼はお詫びしましょう。しかしあなたたちはどう見ても貴族、それもかなり上の。そんな方たちがわざわざこんな診療所に来るなんて理解できませんね」

「ここに診療所があったからきた。それではいけませんか？」


（この男本当に腹立つ。薄茶の髪の方は一言も話さないし）


私に返事を返すのは銀髪の方ばかりで、薄茶色の男はただ黙って診療所を見渡したり私を品定めするかのように見つめてくるだけ。

いい加減に腹が立ってきた。二人ともどこか体が悪いとは思えない。さっさと帰ってくれ。


「シエルちゃん落ち着いて、それでお二人は診察を受けに来られたのですよね？」

いらいらし始めた私をみかねてノーラさんが助け船に入ってくれた。


「第四区で貴族の娘が医者のまねごとをしているとお聞きしましたから。どの程度か見に来ただけです」


先ほどは患者と自ら言ったくせに、見に来ただけなんて。


「それより貴方はレティシア子爵家のシエル嬢ですよね？きけば社交界にも出ていないとか。一体何がしたいので？」

「お金持ちの貴族さまはご理解できないかもしれませんが、我が子爵家は貧乏ですので。こうやって生活費を稼いでいます」

思いっきり銀髪をにらみつけながら言ってやった。


「貧乏ならなおさら金持ちの貴族を堕として結婚した方がいいのではないか？それか身売りをするか」

私の言葉に返事を返したのは、銀髪ではなく薄茶色の髪の青年だった。
しかもずいぶんなことを言ってくれる。

「み、身売り？！」

ノーラさんも目を大きく開いて驚いている。
ハルも悔しそうに唇をかんでいる。


「第四区の女はみんなそうやって生きているのではないのか？」

「っ、」


もう、我慢の限界だった。自分が馬鹿にされるのも侮辱されるのも構わない。医者になったときも、第四区で診療所を開いたときもいろいろ言われたから。
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