恋の宝石ずっと輝かせて2
 瞳に通された部屋は、数奇屋風で和の落ち着きが感じられる。

 テーブルの横に大きな紫の座布団を用意され、仁はかしこまってそこに座った。

「先輩、楽にして下さい」

「いや、でも、その、やっぱり、なんか、その」

 楓太に言われて瞳を探るような気分で来てしまったが、今頃になって自分の無謀さに後悔してしまった。

 落ち着かないままに、そわそわとしてると瞳はくすっと笑う。

「まさか先輩がうちに来てくれるなんて思わなかったです。私すごく嬉しいです。どうかゆっくりして下さい。うちの家族も先輩のことは良く知ってますから。何も緊張されることないですから」

「えっ、どうして僕のことを瞳ちゃんの家族が知ってるの?」

「だって、先輩は良子先生の甥っ子さんでしょ。それに、私、学校のことよく話すから、先輩のこともいっぱい言ってるんです。好きで憧れてるとか、なんて」

 瞳は物怖じせずに素直に自分の気持ちを伝えてくる。

 仁の方が敵地に迷い込んで怯えて、何も言えずに瞳の思う壺にどんどん嵌っていく気分になった。

「ぼ、僕は……」

 誤解のないように、自分には好きな人がいるとはっきりいいたかったが、その時瞳の祖母が冷たい飲み物をお盆に載せてやってきた。

「良子先生の甥ごさんでしたよね。これはこれはようこそいらっしゃいました。お噂はよく伺っております」

 目の前に琥珀色した液体が入ったグラスを置かれ、仁はその場に合わすように頭を下げた。

「さあさ、どうぞ冷たいうちにお飲み下さい」

 どうすることもできずに、場をつなぐため飲み物に口をつけた。

 麦茶だと思ったその飲み物はすっきりとした甘さがあり仄かに生姜の味がした。

 仁がその味に驚いた顔をしていると瞳が説明しだした。

「それうちに代々伝わる秘伝の冷やし飴なんです。おいしいでしょ」

「ああ、美味しい」

 仁はもう一口飲んだ。

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