恋の宝石ずっと輝かせて2
 瞳の家は代々受け継がれてきたようなどっしりと存在感のある大きな日本屋敷だった。

 山をバックに田畑に囲まれてはいるが、田舎の金持ちと呼ぶに相応しく、でんと構えて瓦が黒々と光っている。

 瞳は楓太を解放し、好きにさせた。

 日陰を求めて去っていく楓太を仁は呼び止めたくなったが、瞳に「どうぞ」と家に案内されて、なすがままに後をついていった。

 家の門を潜ると、白い小石が張り詰められ、低木や松ノ木が見栄えよく植えられ、灯篭もあってミニ日本庭園のようにきれいに整備されていた。

 端の方に小さな祠が祭られていたのがちらりと見えた。

 まるで小さな神社のようだった。

 瞳が玄関のドアをスライドさせ「ただいま」と声を掛けると、中から年老いた夫婦が揃って玄関にやってきた。

「お客さん連れてきた。学校の先輩の新田仁さん」

 瞳が後ろに居た仁を紹介すると、老夫婦は目を見開き慌てて挨拶をする。

「こ、これはようこそいらっしゃいました。どうぞおあがり下さい。さあさ、遠慮なさらずに」

 年老いた男性が広々とした三和土にぴょんと降りて履物を履き、仁の側まで行って迎える。

 熱烈な歓迎振りに仁は戸惑っていた。

「私の祖父と祖母なんです」

 仁は「初めまして」と頭を下げて挨拶すると、同じように祖父も深々と頭を下げた。

「先輩、遠慮なくあがって下さい」

 瞳に言われるままに、仁は靴を脱ぎ、成り行きとはいえ、とんでもない展開に少々腰が引けた。

 前屈みになりながら、恐る恐る廊下を歩くと草木を植えた風情ある中庭があり、家の広さがますます窺えた。

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