恋の宝石ずっと輝かせて2
「ほんとだ。かわいいね。半透明っぽい白さだし、形も本当にハートだ」

 仁にとっては愛想笑いのつもりだったが、瞳は自分だけに向けられた笑顔として受け取り、益々気持ちが高まっていった。

「よかったらこれ先輩が持っていてくれませんか? そしたら私も嬉しい……」

「えっ? そんな、いいよ。折角瞳ちゃんが見つけたんだから……」

 形がハートなだけに何やら瞳の特別な感情がそこに表れているように見えて、仁は少し戸惑った。

「だから、先輩に持っていて欲しいんです。こんな石、滅多にないし、実はこれを見つけたときなんだか光って導かれた気がしたんです。手に取ったら不思議と熱っぽくて、急に体から力が湧いた気分になっちゃいました。それで時々願い事したりしてたんですけど、本当にそれが叶ったんです」

 瞳の願い事は仁と会えたり、話をしたりするということだった。

 すっかり石の信者になったように石を特別なものに思ってる様子だった。

「そんな石なら尚更、瞳ちゃんが持っているべきだよ」

「だから先輩に持っていてほしいんです。先輩が大学に合格しますように。私からのお守りとして」

 その裏には自分のことを好きになってもらえたらと、石が何かの力を及ぼしてくれるのではという期待も瞳は持っていた。

 薄々瞳の企みを感じていても、押し付けられると仁も断るにも断れない。

 お人よしと呼ばれる損な性格が発動してしまった。

 瞳は、仁の手をとってその上に乗せた。

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