恋の宝石ずっと輝かせて2
 高校生の時のあどけなかった少女の面影は残りつつも、そこには大人びた美しい女性が清々しい微笑を仁に向けていたからだった。

 あれからかなりの年月が確かに経ってしまった。

 そしてユキと仁はすっかり大人になってふたりで一緒の道を歩んでいる。

 沢山のあの時に抱いた思いも忘れずに抱えて、それ以上のふたりで育んできた思いと自分たちの娘もさらに加えてここへやってきた。

 ユキと仁は寄り添い、堂々と目の前の大木を見据えた。

 優しいそよ風が心地よく通り過ぎては、それに合わせて木々の枝と葉っぱが泳ぐようにゆったりと揺れていた。

 その時、緑が大きな声で呼んだ。

「ママ、パパ、ねぇ、こっちきて。ふさふさした毛の犬さんと、パタパタとんでる黒い鳥さんがいるの」

 ユキと仁は顔を見合わせた。

 そして緑のところへと駆け寄っていく。

「どこで見たの?」

 ユキは胸がドキドキと高鳴っていた。

「あっち! あれ? いない。ほんとにいたんだよ。じっとみどりのこと見てたんだから」

 嘘と思われたくなくて、緑は泣きそうな顔をしてしまう。

「うん、パパは信じるよ」

 仁は緑の目線までしゃがみ、頭を優しく撫でた。

「ママだって信じるわ!」

 ユキも力強く思いを娘にぶつけた。

 緑はパッと顔を明るくし、はちきれんばかりに笑みをこぼした。どうしてもふたりに見せたくて、再びそれらを探そうと元気よく走っていった。

 仁も無理して、ぜいぜいと息を吐きながら娘の後を追いかける。

「緑、足元には気をつけろよ。こけるんじゃないぞ。あっ!」

 仁の方が躓きそうになっていた。

 側で緑がキャッキャと嬉しそうに走り回る。

 仁と緑は追いかけっこを楽しんでいた。

 その声を聞きながら、ユキはもう一度、あの木を振り返った。
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