恋の宝石ずっと輝かせて2
 唯一、仁だけはユキを理解していつも労わってくれる。

 仁の存在がユキを正常にしていると言っても過言でないくらい、ユキは仁が居なければ真っ直ぐと前を歩く事ができなかったかもしれない。

 失ってしまった大切なもの。

 それが心の中にあるだけでは満足いかない。

 誰かがそれを肯定して、そうだったと言ってくれたとき、ユキはかろうじて安らぎを得ていた。

 だからユキは誰よりも仁の側にいる。

 そんな二人が頻繁に行動を共にすればとても仲がいい恋人同士に見えるが、ユキはまだ仁のことをそこまで認めていないのがずるいところだった。

 マリが示唆するように、それは仁の気持ちを弄んでいると思われても仕方がない。

 それでも仁もまた自分があの時言った言葉を忘れていないのである。


『僕、待つよ。ずっと待つよ。ユキがトイラのことを思い出しても苦しくなくなるまで。ずっと待つ』


 仁の気持ちは嬉しくとも、ユキはまだ自分のことを考えるだけで精一杯だった。

 夏の湿気を伴った暑さが教室内で漂い、どこかで蝉の鳴く声が聞こえてくる中、担任が通知簿を配り、名前を呼ばれた生徒が次々に取りに行く。

 そしてユキの名前も呼ばれた、ユキははっとして立ち上がり、慌てて通知簿を取りに行った。
 

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