恋の宝石ずっと輝かせて2

 ユキは暫く考え込む。

 マリに仁との関係のことを説明したところで、肝心な部分が言えないだけに理解してもらえないことは充分にわかっていた。

 前年の初夏の頃、トイラはユキを助けるために自分の命を犠牲にした。

 あの時の出来事はユキの心の傷となるようにいつまでも刻み込まれている。

 だが、なんとか頑張ろうと踏ん張って前を向いて歩いてきた。

 そうする事ができたのも、前向きになったとき、ふとトイラを側に感じられることがあったからだった。

 トイラの命と想い出が自分の中にある。

 そう思えば、一生懸命前を向いてトイラと共に歩くしかない。

 暫くはそれで乗り越えてきたけども、それは最初の頃だけで、あれから一年が過ぎた今は、どんなに前向きになってポジティブ思考で行動してもトイラを側に感じることはなくなった。

 次第に寂しさが募り、それでも負けずと前を向こうと一応は努力する。

 だけど、トイラの写真もトイラが居たという存在を証明する記念の物も何一つなく、ただ心の中にトイラへの想いがひしめき合うだけとなってしまった。

 それは浸れるような甘いものではなく、会いたくて恋しくて寂しさが募るやるせない色に包まれた思い出。

 ふと力を抜けば、トイラと過ごした記憶がどこかへ抜け落ちていくんじゃないかという恐れに囚われてしまう。

 そんな不安定なときに限って、夢だったと自分で追い込んでしまえば、狂ってしまいそうで怖くなる。

 それでもトイラが本当にいたんだと、その想い出が嘘ではないんだと思うためにも仁の存在が欠かせなかった。

< 5 / 253 >

この作品をシェア

pagetop