恋の宝石ずっと輝かせて2
「それは大変お気の毒です」

「わしなんかよりも、消えたニシナ様がどうされたのが気になって」

「犯人に全く心当たりはないんでしょうか。何か気がついたこととかありませんか?」

 セキ爺は目を閉じて少し考え込んだ。

 その時、ユキがお茶を運んできて、セキ爺とキイトの前に置いた。

 キイトはすぐさまそれを手に取り、息をふうふうかけて飲み始めた。

 その横でセキ爺は考えて、やっと声にだした。

「これは断定できないんじゃが、もしかしたらカジビが戻ってきたんじゃないかと思えてのう」

 その言葉にキイトの動きが止まった。じっとセキ爺の言葉に耳を傾ける。

「カジビは以前も赤石を奪おうとしたこともあったし、その後失敗して姿をくらましたけど、チャンスを窺っていたのかもしれない」

「セキ爺、ほんとにそれはカジビの仕業だと思う?」

 キイトが小さな声で問いかける。

「これはわしがそう思うだけで、そうとは決まったわけじゃない。それともキイトは他に誰か疑わしき者がいると思うのか?」

「はっきりとしないのなら、この山にいる皆、怪しくなってしまう」

 キイトの声が少し震えていた。

「そりゃそうじゃが、カジビには前科があるだけに、このことを知ればカジビだと思うのは多いはずじゃ」

「私ははっきりするまでカジビの仕業だと決め付けたらいけないと思う……」

 ぼそっと言ったキイトの声にセキ爺は飲もうとしていた紅茶のカップを口元で止めた。

「キイトが庇いたい気持ちもわからんではない。お前はカジビとは仲がよかったからのう。それにカジビが赤石を狙ったとき、お前は離れた山で休養していたから何も知らんだけに無理もない。だがもしカジビが犯人でないのなら、堂々と姿を現してもいいと思うのじゃが」

「いや、疑われると思ってるから、ただ名乗れないのじゃないか」

 ユキが腕を組んで壁にもたれていた。
 それはトイラの意識だった。
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