ロスト・ラブ


「補習、1週間だっけ?私も一緒に学校来るから、帰りに寄り道でもしようよ。ね?」

「うぅ……。夏休みは茜ちゃんとパーッと遊ぼうと思ってたのに~!」

「ほーらっ、元気出して!」


人にはそんなことを言えるくせに、私自身は元気なんて出せる気分ではなかった。


「茜ちゃん?」

「えっ?あ、ううん、なんでもないよ」


そんな私の不自然な様子に胡桃はきっと気づいてるはずなのに、何も聞かないでくれている。

あの勉強会が急になくなった時だって、胡桃は何を聞くわけでもなく、「わかったよ」の一言だけだった。


……本当、私は胡桃に気を遣わせてばっかり。


「ねぇ、胡桃。今年の夏休みは何して遊ぼっか?」


明日の終業式が終われば、明後日からは夏休みだ。


だからせめて、これまでの感謝の意味も込めて胡桃とはたくさん思い出を作りたい。

そう思って聞いてみると、胡桃の表情は嬉しそうにパーッと明るくなった。


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