ロスト・ラブ


前まではむしろ距離を空けたかったのに。


完全に、近づきすぎた。

そう気づいたところでもうこの気持ちを巻き戻すことはできない。



「茜ちゃん?」

胡桃からの呼びかけに、ハッと我に返った。


気づけば教室にはもう私と胡桃しか残っていない。


「あ、ごめん胡桃。夏休みの話だよね。計画立てないと……」

「ねぇ、茜ちゃん」


慌てて話を戻そうとした私に、胡桃は遠慮がちにそれを遮ってきた。


「ん?」

あくまでも普通を装って返事をしたけれど、胡桃のその目を見て自分が心配をかけてしまっていることは嫌でもわかってしまう。


「……胡桃ね、茜ちゃんのこと大好きなの。だから、茜ちゃんが1人で辛そうにしてるのはあんまり見たくない」

「……うん」


今まで何も聞かないでくれていた胡桃がわざわざ私にそう言ってくるってことは、きっと相当変な顔をしていたのかもしれない。


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