ロスト・ラブ


観覧席に着くとすぐに、会場中で花火の打ち上げ開始のカウントダウンが始まった。


「「10、9、8……」」

視線はみんな夜空へと向けられる。



「茜」

「ん?」


それなのに、颯太だけは私の方を見て……。



「その浴衣、すげぇ似合ってるよ」

「……っ!」



不意にそんなことを言ってくるものだから、カウントダウンなんて一瞬で頭から向け落ちてしまった。



「「3、2、1……!」」

────ヒュルルル……ドーン!



いつの間にか終わったカウントダウンの直後、夜空には大きな花火が咲き誇る。



ドクン、ドクン。


それなのに、私はその花火たちよりも、颯太の言葉で頭がいっぱいになっていた。



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