ロスト・ラブ


「……なんか、いま私無敵かもしれない」

「は……?」


思わず口にした言葉に颯太は心底不思議そうな顔をしたけど、だってそう思っちゃったんだもん。


なんだろう、これ。

目の前の人ごみも、全然不安がない。



「颯太がこうしてくれたら、私、なにも怖くないかも」


颯太の目を見て言った。


すると颯太は、驚いたように目を丸くしたあとで。


「……そうかよ」

小さいその返事とは裏腹に、安心したような、照れたような、それでいて嬉しそうな。そんな顔をしてくれるものだから。


あぁ、好きだなぁ。なんて、また颯太への『好き』が積もった。


「茜ちゃーん!こっちこっち!」


少し先に進んでいた胡桃と須藤くんのあとを、颯太と追った。

もちろん、手は繋いだままで。


< 234 / 285 >

この作品をシェア

pagetop