恋かもしれない
「主人と、赤い糸が繋がっていたのよね」

「いいですよね。私にも、そんな出会いがあるといいな」

「あら。縁なんて、どこにどう転がってるか分からないのよ? だから、奈っちゃんも、ここと家の往復だけじゃなくて、いろんなところに出かけなきゃね!」

結婚相談所に登録してること、美也子さんは知らない。

もちろん、土曜に婚活パーティに行ったことも。

男性と話すのが苦手なことは、面接のときに打ち明けたから知ってるけれど。

いろんなところ、か。

どこに行けばいいのかな。

どうすれば、緊張しないでいられるのかな。

こんな私を受け止めてくれる人、何処かに、いるのかな。

「――はい。頑張ってみます」

力弱く言って曖昧に笑う私の前に、「あはは、頼りないなぁ。はい、珈琲」と、珈琲豆がぐるりと描かれたマグカップが置かれる。

これはロールストランド社のもので、ゾエガコーヒーのノベルティとして作ったものらしい。

値段を知っている私としては持つのも慎重になるけれど、美也子さんは稀少で高価なものも惜しげなく使う。飾るだけじゃ勿体無いわ!と言って。

雑貨のことを語る美也子さんの瞳はキラキラしていて、本当に好きなんだなって改めて思う。

御主人も、こんなところに惹かれたのかもしれない。

私には、人を惹き付ける何かはあるのかな。

「奈っちゃんも、いつか一緒に行きましょうね。蚤の市とか、面白いわよー。さ、午後も頑張りましょう!」
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