恋かもしれない
「以前、ここで約束したこと覚えてる?」

松崎さんは頭の上で囁くように訊いてくる。

「〝モーニングの喫茶店〟と〝部屋でのお茶〟だよ。今夜、その約束を果たしてもらうから。いいね?」

「……あ」

モーニングの喫茶店に連れていく。

その意味が今分かって、顔がカーッと熱くなる。

そ、そういうことだったの。

ただ一緒に喫茶店に行くだけじゃなくて……。

あのとき既に、松崎さんは、もう……そのつもりで……。

「それと、出発前に俺が言ったことも覚えてるよね?」

「はい……覚えています」

答えるとすぐ唇を塞がれて、舌が侵入してきた。

後頭部を押さえられ、貪るように口中を動く舌に懸命にこたえていると、次第に体の力が抜けてきた。

こんなふうになるなんて、知らなかった……。

松崎さんの腕にまるごと体を預けると、ゆっくり唇が離された。

そのなまめかしく濡れた唇が、私の額にそっと触れる。
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