恋かもしれない
急いで階段を駆けあがっていくと、そのシルエットが振り向いた。

足元には、見覚えのある大きなトランクがある。

「奈津美、ただいま」

「……松崎さん!」

久しぶりに見る松崎さんはやっぱり素敵で、いつ帰ってきたの? とか、ずっと待っていたの? とか、頭の中に浮かぶけれど、言葉になって出てこない。

「……おかえりなさい」

「奈津美に早く会いたくて、空港から直接ここに来ました。顔をよく見せて」

顎に指が添えられて上を向かされた。

玄関灯に照らされた松崎さんの潤んだ瞳が、だんだん近づいてくる。

自然に目を閉じると、そっと唇が合わせられた。

触れるだけの優しいキスをした松崎さんは、そのまま私を抱きしめてくれる。

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