ストーカーと王様と時々アサシン
第3章
◯自宅アパート・ドアの開いた玄関(夜)



柳「えと、栗林さん?」


潔「はい。」


柳「これからよろしくとは、どういうことでしょうか?」


潔「こちらで一緒に生活させて頂きます。柳さんのご両親様には既に了承を頂いております。」


はああ!?

何も聞いてないんですけど!


柳「ちょっと、待って下さいね。」


彼が次に何かを言う前に私は片手でやんわりと制し、風を切るが如くくるりと背を向けた。


私は警察に連絡するのを止め、母親に電話を掛けると母親は直ぐに明るい声で電話へと出た。


柳「ちょっとどういうこと!?」


口許に手を添えて声を潜め、栗林さんがアパートにいるこの状況、そして了承したとはどういうことかと問えば…


母「良い人じゃない。」


柳「経歴はね!」


素行はすこぶるヤバイよ!?


柳「いやいや、そう言う感想を聞きたいんじゃなくて!」


母は私の話を聞いていないかの様に話を続ける。


母「それに、お父さんが退職した後でふたりで喫茶店やろうと思ってるの、って言ったら資金も出してくれてねー」


そして、私は察した。

ああ、つまり私は売られたわけだ…

この楽天的な親に…

絶望感から、地面に手をついて打ちひしがれる。



母「お姉ちゃん達は結婚して、柳だけがいつまでもお嫁に行かないから心配だったけど、これで肩の荷が降りたわ。早く孫も見たいわねー」


ん?ん?ん?


"ん"が三回続くほど、引っ掛かるものがあった。


嫁?孫?


母「潔さんと仲良くやんなさいよ。」


母親はそれだけ言うと、一方的に電話を切った。


柳「ちょっ、まっ…」


私は通話が切れたスマホを見つめた。


あの様子じゃ掛け直してももう電話には出ないだろう。


これは、目の前の答えをくれる人に聞くしかあるまい。


柳「あの、母が電話で嫁とか孫とか言ってたんですが、これはどういう…」


潔「私と柳さんは今日結婚します。」


柳「今日!?」


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