それが答え〜やっぱり一緒に・・・〜
「隆司さん!」


私は、夫の胸に泣きながら飛び込んだ。


「ごめんなさい、隆司さん。ごめんなさい。」


「どうしたんだよ、なんで朱美が謝ってるんだよ。」


「なんでもいいの。とにかくごめんなさい。」


「なんだよ、変な奴。」


そう言って、苦笑いしながら、でも隆司さんは私を優しく抱きしめてくれる。


私が謝ってる理由なんて、口が裂けても言えないけど、隆司さんの言葉は、私の目を覚まさせるには、超弩級の破壊力だった。


私は不倫をし、離婚を心に決めて帰宅して来た、とんでもない妻。でも知らないとは言え、隆司さんは、そんな私の帰りを待ちわび、自分の気持ちをぶつけてくれた。


嬉しかった、そして気付いた。私は隆司さんへの思いを決してなくしたわけじゃなかった。その証拠に、隆司さんの言葉を聞いた瞬間、私の心の中から、内藤店長は消えた。離婚を切り出そうとしていた自分はいなくなった。


確かに私は隆司さんに不満があった。寂しかったし、酷い夫だと思ってた。だけどじゃあ、そんな状況を打開しようと私は何をしたの?隆司さんに気持ちをぶつけた?隆司さんにちゃんと笑顔を向けてた?


結局、私だって、隆司さんと向き合うことから逃げてた。寂しい、夫が相手にしてくれない。そう言って拗ねていただけ。


挙げ句の果てに、私は許されないことをしてしまった。私のやったことに、正当な理由なんて、どこにもない。


同じようなことを聞きながら、自分を省みて、私に向き合ってくれた隆司さんと、そんな大切な人に三行半を突きつけようとした私。人間としての器の違いがあまりにも悲しかった。


ひとしきり泣いた後、私は隆司さんの顔を見上げた。


「遅くなっちゃったね、カレー作るよ。」


「でも、あれはとても・・・。」


「大丈夫、私に任せて。だてに20年、主婦やってないから。」


「わかった。頼むよ。」


笑顔を交わし合うと、私達は身体を離した。
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