それが答え〜やっぱり一緒に・・・〜
その夜、当然のように夫に誘われた私は、静かに首を横に振った。


「お前、この流れで拒否るの?」


さすがに夫は呆れたような声を出すけど


「ごめんね、今日はもう遅いから。その代わり、明日、明日必ずお願いします。」


ほんの数時間前まで、他の男に委ねていた身体を、今、夫に開くのは、あまりにも罪悪感が強すぎた。


それに、再び隆司さんの妻に戻るには、けじめをつけなくちゃならない。


翌日、事務所に店長を訪ねた私は、退職届を提出すると


「短い間でしたが、いろいろとお世話になりました。」


いろいろ、という言葉に思いを込めて、私は店長に深々と頭を下げた。


昨日から、あまりにも急転直下の私の態度に、唖然として、言葉を失っている店長を残して、私は事務所を出た。


これでけじめがついた・・・わけがない。私が犯した罪は2度と消えることはない。でもどんなに卑怯と言われても、不誠実と罵られても、私はこのことは、墓場まで持って行く。


そして、もし全てが露見してしまった、その時には、夫からのどんな制裁でも甘んじて受ける覚悟と共に生きて行く。


帰宅した夫に、退職届を出したことを告げると


「えっ、辞めちゃったの?大丈夫なのかよ?」


と驚かれたけど


「うん。会社には、迷惑掛けちゃうだろうけど、私にはもっと大事なものがあることに気付いたから。」


と笑顔で答える私。


確かにもうあの会社には、現実問題として、居られない。だけど、夫に言ったその言葉は、嘘じゃないから。
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