恋と眼鏡
悲しいことなんてなにもないのに、胸が張り裂けそうなくらい、痛い。

「私も反対したのだが、祐典さまがどうしても加代に任せたいというから仕方ない。
おまえはこちらの準備にかかりきりになって欲しい。
なに、重要なことは私がするから問題はない」

「……わかり、ました」

慰めるように鷹司さんにぽんぽんと肩を叩かれ、ただ頷くことしかできなかった。



この日から祐典さまは夜、私を呼ばなくなった。

奥方さまをお迎えになるのだから、もう女中とふたりきりで過ごすなんてことができないのはわかっている。

けれど、あんなに私を傍に置いてなにかと世話をさせていたのに、全くなくなった。

確かに、婚礼の支度にかかりきりになっている私には、祐典さまの身の回りのお世話をする余裕はない。

でも、私を避けるためにそうしたのではないかなどと思うのは、考えすぎだろうか。
< 18 / 30 >

この作品をシェア

pagetop