俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~

ただ転びそうになったのを支えただけなのに、なんでそんなに取り乱すんだ。
不思議に思いながら見下ろすと、髪の間からのぞくうなじや耳たぶが真っ赤に染まっていた。

その瞬間、胸になにかがせまり、ぐっと言葉につまる。

彼女の体を支えていた腕を緩めると、鈴花は俺から顔をそらしたまま逃げるように距離をとった。
そして二、三度深呼吸をしてから、おずおずと俺に向かって礼を言う。

「あの、ありがとうございました」

抱き寄せられたことにまだ動揺しているのか、彼女の頬は赤いままだった。
その初心な反応に、心が揺れそうになる。

相手は見合いの場に恋人を連れてくるような性悪な女なんだから、騙されるなと自分を戒めてから口を開いた。

「倒れそうになったから、反射的に手が出ただけだ」

ぶっきらぼうにそう言うと、穂積はフォローするように横から声をかける。

「鈴花さん、早かったですね。急いで着替えてきたんですか?」

穂積がそう言うと、彼女は胸元に手を当てほっと息を吐き出す。そして俺の方を見ながら口を開いた。


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