俺の新妻~御曹司の煽られる独占欲~

「和樹さんをお待たせしているので急がなきゃと思ったんですけど、なにもないところでつまずいて転ぶなんて恥ずかしいです」

そう言って、わずかにはにかむ。
少し紅潮した柔らかそうな頬を見て、思わずぐっと言葉につまった。

俺がさっさと着替えろと言ったから、彼女はわざわざ急いできたのか。

さっきまでは結い上げられていた彼女の髪が、今は自然に下ろされていた。
彼女がなにげない仕草で頬にかかる髪を耳にかけると、細い肩の上で綺麗な栗色の髪がさらりと流れた。

振袖のときのたたずまいや所作は目を奪われるほど美しかったけれど、洋服を着た彼女の立ち居振る舞いもやはり綺麗だ。

いや、騙されるな。こんな従順でけなげなふりをしているけれど、本性は恋人がいても金のために結婚するような最悪な女だ。

なんて心の中で自分に言い聞かせていると、穂積はぽんと俺の肩を叩いて意味ありげに笑う。


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