夢はダイヤモンドを駆け巡る
第2話
「……と、そこで夢は終わります」
「わたしが見た夢と全く一緒ですね、数学が解けるかどうかという点以外は! それにしたってさりげなく数学が得意ってことアピールするのがお上手ですね!」
夢の細部まで同じな分、ややいらいらする。
わたしがからきし解けなくて松本くんがさっさと解く様子がすごいとすら思ったのに、その松本くんの鉛筆さえも遅く感じるだなんて!
「いえ、私はこれでも数学は苦手な方です。
化学が大の得意で、数学など大した力はありません。
ただ、去年学習した範囲だったから解けただけです」
「ああ、そうですか!」
小神が悪気の欠片もなく正直に答えている点が、なおのこと腹が立つ。そこで少しでも気を遣った返答をしてくれればいいものを!
「話を戻してもいいですか」
「どーぞどーぞ」
わたしは不満げに頬を膨らせていたけれど、小神は不思議そうに首を捻るだけでわたしの不機嫌など一切意に介さないご様子。
小神は腰かけているコンクリートの階段の脇の茂みの部分に生えていた蒲公英を引きちぎる。茎を指先でくるくる回しながら、
「星野さんは蒲公英の花言葉をご存知ですか」
突然すぎる問いを投げかける。何で急にこの質問なんだ、話の続きをしなさいよと思いながら、わたしは
「ド根性」
と当てずっぽうに答えた。それから自らをフォローするように、
「どこにでも生えてるから」
と理由づける。思いつきの説明だが、悪くはないはずだ、と心の中で自画自賛する。もしかしたら正解かもしれない、とすら一瞬考えたが、小神のクソマジメな答え合わせによって一蹴された。
「不正解です。正しくは、『愛の神託』ですよ。『ド根性』ではありません」
そう言って小神は蒲公英をわたしに差し出した。
「どうぞ」
全く照れた様子もなく飄々と、小神は花をわたしに向けていた。
「……『愛の神託』をわたしに捧げる……みたいなことですか?」
自分でも己の顔の左半分が引きつっているのがわかった。小神ってこんなドラマめいたことするキャラだっけ?と。
「わたしが見た夢と全く一緒ですね、数学が解けるかどうかという点以外は! それにしたってさりげなく数学が得意ってことアピールするのがお上手ですね!」
夢の細部まで同じな分、ややいらいらする。
わたしがからきし解けなくて松本くんがさっさと解く様子がすごいとすら思ったのに、その松本くんの鉛筆さえも遅く感じるだなんて!
「いえ、私はこれでも数学は苦手な方です。
化学が大の得意で、数学など大した力はありません。
ただ、去年学習した範囲だったから解けただけです」
「ああ、そうですか!」
小神が悪気の欠片もなく正直に答えている点が、なおのこと腹が立つ。そこで少しでも気を遣った返答をしてくれればいいものを!
「話を戻してもいいですか」
「どーぞどーぞ」
わたしは不満げに頬を膨らせていたけれど、小神は不思議そうに首を捻るだけでわたしの不機嫌など一切意に介さないご様子。
小神は腰かけているコンクリートの階段の脇の茂みの部分に生えていた蒲公英を引きちぎる。茎を指先でくるくる回しながら、
「星野さんは蒲公英の花言葉をご存知ですか」
突然すぎる問いを投げかける。何で急にこの質問なんだ、話の続きをしなさいよと思いながら、わたしは
「ド根性」
と当てずっぽうに答えた。それから自らをフォローするように、
「どこにでも生えてるから」
と理由づける。思いつきの説明だが、悪くはないはずだ、と心の中で自画自賛する。もしかしたら正解かもしれない、とすら一瞬考えたが、小神のクソマジメな答え合わせによって一蹴された。
「不正解です。正しくは、『愛の神託』ですよ。『ド根性』ではありません」
そう言って小神は蒲公英をわたしに差し出した。
「どうぞ」
全く照れた様子もなく飄々と、小神は花をわたしに向けていた。
「……『愛の神託』をわたしに捧げる……みたいなことですか?」
自分でも己の顔の左半分が引きつっているのがわかった。小神ってこんなドラマめいたことするキャラだっけ?と。