夢はダイヤモンドを駆け巡る
「私は一応、『小神』――〝小さな神〟ですので。星野さんに私の愛ゆえのアドバイスをと」

 また「愛」って口にした!

 小神は「愛」をどうにも安売りしすぎる傾向があるらしい。

 安っぽい愛なんて、ちっとも嬉しくない――

 いや、それが真剣な愛だとしても、いずれにしたって嬉しくないのだが。

「とまあ、それはともかく」

 わたしがドン引きしたままでいると、小神は無表情のまま蒲公英を持った手を下ろし、それまでのやりとりが何事でもなかったかのように切り出した。何を考えているのか、本当にわからない男だ。

「重要なのは、私が見た夢とあなたが見た夢とが細部まで完全に一致しているということですよ」

 そうだ。

 わたしが見た松本くんの夢。それは、試験を受けようとした松本くんが、野球をしている少年たちに気を取られ、階段から落下する――簡潔に言えばそんな筋だ。

 その筋は見事なまでに小神が過去に見たという夢に一致する。

 これは、つまり――

「松本くんが毎晩同じ夢を見ている、ということですか?」
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