クールな彼とちょっとドジな彼女の恋の攻防戦(後日談移動しました)
隣に立った向井さんが、カゴの中を覗いてふーんと頷いた。
「カレー作るのか?」
「そうですけど」
「最近、カレーって食べてないな」
だから?
「そうなんですか…」
無視を決め込むはずが、つい答えてしまっていると気がつき、次の言葉が詰まった。
「ブロックの豚肉、美味いよな」
「私は、挽肉派です」
そういいながら、カゴに安い合挽肉を入れたのに、戻されてブロック肉の豚肉が代わりに入れられた。
「何するんですか?」
「肉はブロックだ」
「私が食べるカレーです。勝手に入れないでください」
「……最近食ってないって言わなかったか?」
「聞きましたけど」
「それなら、俺の分も作りましょうかってならないか?」
「なりません」
「即答かよ」
クックククと、また楽しそうに笑い出す向井さんを放置してブロック肉を戻した私は、一瞬考えて、粗挽きの挽肉を選んで入れた。
「お肉がこれでいいなら、少しだけ分けてあげてもいいですよ」
「…サンキュー。中辛な」
嬉しそうに笑う向井さんに、一瞬だけときめいてしまった事は、気がつかないフリをした。
そして、なんだかんだと一緒に買い物してしまい、会計の3分の2は、彼が支払ってしまって、荷物まで持ってくれている。