残り香
「……ありがとうございます」

ぽんぽん、慰めるように柴崎さんの手が私のあたまにふれる。
つんと痛くなった鼻の奥を誤魔化すように顔をあげた。

「でもミスはミスだ。
もっと俺なり課長なり聞けばよかったんだ」

「はい」

柴崎さんの声が厳しくなり、背筋が伸びる。

「次からは気をつけろよ」

「はい」

壁から身体を起こし、柴崎さんは振り返って笑った。
笑い返すと手が伸びてきて、私の髪の毛がぐしゃぐしゃになるほどあたまを撫で回す。

「セクハラですよ」

「そうか?」

私がわざとらしく頬を膨らませて唇を尖らせると、ニシシとおかしそうに柴崎さんは笑った。

「おまえはいつもあぶなっかしーから目が離せいない」
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