残り香
柴崎さんの、眼鏡の奥の目が眩しそうに細くなり、心臓がどきんと跳ねる。
どきどき、どきどき、甘い鼓動を刻み続ける心臓に胸がぎゅーっと苦しくなった。

「さっさとそれ飲んで仕事に戻れ」

ひらひらと手を振って、柴崎さんは去っていった。

すっかりぬるくなったミルクティの缶をカシュッと開けて口に運ぶ。

「……柴崎さんにはかなわないな」

きっと、私がひとりで泣きに行くのがわかっていて声をかけてくれたんだと思う。
おかげで、そんな気分はすっかりなくなっていた。
それにただかばって慰めるんじゃなく、ダメなところはダメだとはっきり注意してくれるところが好きだ。

「もし告白したら、柴崎さんはどうするんだろう」

係長の柴崎さんの部下になってから、少しずつ気持ちは募っていった。

へこんでいればすぐに慰めてくれる。
無茶したら怒られるし、間違いは厳しく叱ってくれる。
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