残り香
「ダメだ。
水城はまだ生きろ」

「なん、で……」

どうして拒否されるのかわからない。
柴崎さんはそのために私のところに来たはずなのだ。

「おまえが今日、死ぬ予定になってるのは俺のせいだ。
俺が死ななければおまえはこんなに早く死ぬはずじゃなかった。
すまん」

あたまを下げられても困る。
柴崎さんが死んだのは柴崎さんが悪いんじゃない。

「おまえはもともと定まっていた寿命をちゃんと生きろ。
わかったな」

「どうして」

とん、俯いて柴崎さんの胸を拳で叩く。

「どうしてそんなこと言うんですか?
柴崎さんがいないなら、生きていてもしょうがない」

責めるようにどんどん胸を叩き続けるが、反応はない。
涙は再びぼろぼろとこぼれ落ちていく。
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