昨日、彼を振りました。
こんな莫迦な理由、話したらどうするんだろう。

「そういう関係になれなくても、おまえに嫌われるよりいいって思ってた。
なのに避けられたら俺、どうしたらいい?」

苦しそうな声にゆっくりと視線をあげると、レンズの向こうに潤んだ瞳が見えた。
とたんに、ナイフが心臓に突き刺さったみたいに、ずくりと胸が痛む。

「さ、避けてるんじゃなくて、その」

「なに?」

荒木さんの壁についてない方の手が私の顎を掴み、上を向かせる。
いままでこんなこと、されたことなかった。
見上げたレンズの先にはなぜか、艶を含んだ瞳。

「あ、荒木、さん?」

「やっぱ無理。
おまえにキスだってその先だってしたい」

「えっ、あの、えっ!?」

少しずつ、荒木さんの顔が近づいてくる。
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