Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
何杯か水を飲んで酔いを醒ますと、お風呂に入った。

慣れない環境で知らない人とミスをしないように気を張っていたので、疲れてしまった。

トリートメントをしに来てくれたマリンが嬉しい提案をしてくれた。

「面倒かもしれませんが、フォルティス様から頂いたドレスを着ませんか?

きっといいリラックスになりますよ。

髪は固めると大変なので、固めずに編み上げてキレイになりましょう。

私も新しい髪型の準備をしたいです!」

にこにことマリンが鏡越しに、癒してくれる。

すごくいい提案だと思って、喜んで乗る。

「ええ、準備を手伝ってくれる?」

「もちろんです!

どのドレスにしますか??」

どれも好きなものだから、すごく悩む。

でもやっぱり、1番気に入っているのは2人で考えてデザインしたもの。

私が好きなシンプルさもありながら、フォルティスがリリはどう見てもかわいい女の子だと言って、絶対に譲らなかったフェミニンさもある。






不思議なことにドレスに袖を通して、鏡で見てみると自信が沸いてくる気がする。

自分とは?という難しい問いかけに、答えてくれているかのようなデザイン。

いつもよりも、自分がキレイに見える。

マリンが髪を美しく編んでくれる。

半分より上の毛を取っていろいろしているけれど、私からは何も見えない。






「できました!!

さっき庭を通ったときに見た薔薇がすごくきれいで、、、

どうですか??」

後ろで三面鏡を持って見せてくれる。

耳のラインを三つ編みにして頭の後ろで薔薇のようにまとまっている。

「すごいきれいね!これ、どうやったの?」

「三つ編みをほぐしながら巻き付けると、こんなふうになるんです。

真ん中にパールを差して、、、どうですか??」

「すごくいい!

もっと小さなパールを所々に挿したら、朝露みたいでもっもいいかもね。」

思いつきで提案すると、手をパンと鳴らしてマリンが言った。

「それ、すごくいいですね!!」

気持ちが落ち着き、リセットできた気がする。





朝起きると、シェヴァ王子は執務室に溜まった仕事と共に籠り、バレンシア大臣は市場に出ているとのことで危険分子は遠ざかった。

「どういたしましょうか。

私は朝食のタイミングで侍女たちには話を聞けましたが、噂程度でした。

もう少し詳しい情報を持っている方を探しましょうか?」

「そうしたい所だけど、側近の方は残っていたの。

あまり出歩いたりしないで、大人しくしていた方が良さそうね。」

「分かりました。

でしたら、婚姻の儀の確認をいたしたらどうでしょうか。」

公爵のまま、フォルティスと結婚することができたら、結婚式という名の婚姻の儀を王宮で執り行ってから、領土に戻り、お披露目する。

マリンの言った練習とは、2人で神殿の前に立って王族や、華族の前で誓いの言葉のような歌を歌うことの練習をすることだ。

音程がころころ変わるわけではないから、そこまで難しくはないけれど、言葉が昔のもので耳馴染みがない。

これを間違えてしまうと、新婚夫婦の縁起が悪い。

みんなに祝ってもらうためにも、上手く成し遂げないといけないのだ。

リズムは簡単でマリンに手を一定のリズムで叩いてもらう。

ぽん、ぽんというリズムを一呼吸で歌うから肺活量が少ない私には、意外といい運動になる。

「ふぅ、これ痩せられるかも。」

「それはいいですね!

2節目の、『離れしときも』はもう少しゆっくりでいいと思いますよ。」

少しコルセットを緩めてもらう。

「えぇ、分かったわ。

息が続かないからつらい。」

「おなかに力を込めるといいらしいですよ?

さぁ、もう一度最初からやりましょう。」

マリンは意外とスパルタだった。

昼に軽食を食べて、次のレッスンは階段を登ることだ。

王宮の式典でしか使わない階段は、30段以上もあって1段は低いけど、全て美しく登りきるのは難しい。

しかも、手すりを使わずに真ん中を歩き、途中でフォルティスと合流してもう少し登る。

そのために、城の中にあるあまり人のいない階段にマリンに案内してもらって、登っては下りてまた登って、と何度も繰り返す。

「10回目です!

リリアンヌ様頑張ってください!」

4階まである階段を、1段1段手すりを使わずに登る。

一緒にやってくれているマリンは私ほどバテてはいないけれど、額にうっすらと汗をかいている。

下りきって、へとへとになると近くのソファーに座って、レモンウォーターを持ってきてくれるマリンを待つ。

少しすると透明なビンに冷たい井戸水とレモンの薄切りを入れて、走ってくる。

蓋をして上下に数回振ると、大きめのグラスに開けてシロップを混ぜてくれた。

少し塩を入れたりしながら、一気に3杯飲む。

マリンにも分けてあげて、2人で一息ついた。

「リリアンヌ様、素晴らしいガッツでしたね。

きっと明日は節々が痛くなると思われます。

普段ならば、マッサージで翌日まで持ち越さないように、ケアいたしますが立ち上がれないとアピールするのはどうでしょうか。

少しでも出歩く機会を減らして、危険を回避しませんか?」

「なるほどね。筋肉痛を逆手に取るなんていい考えだわ。

朝食も給仕係の人には悪いけど、持ってきてもらいましょう。」

マリンの頭は驚くほどよくキレる。

それに彼女も私に付きっきりで仕事をしなければいけない状況よりも、動き回りやすいはず。

それに、1番に私のことを思いやってくれているのが分かるから、嬉しい。

「戻って汗を流したいわ。

お風呂を今から使えるかしら?」

「えぇ、帰りに使用人の控えに寄ってみましょう。

リリアンヌ様は1人で歩くのは危険なので、面倒ですが、ついてきて頂けますか?

まっすぐお部屋に戻るよりも、だいぶ遠回りなのですが。」

「えぇ、もちろん。

少し皆さんにお礼をいうことは可能かしら?

いつも、お風呂に香りのいい入浴剤が入っているのがすごく気持ちいいの。」

「きっと喜ぶと思いますよ。





ここです。」

< 41 / 51 >

この作品をシェア

pagetop