夢物語
 いつもと違うゲートから入り、歩き慣れない経路で、いつもとは反対側の指定席エリアへと入る。


 最前列からは十列目くらいの座席が私たちの場所だった。


 「最前列よりもこの辺りのほうが、ピッチを見渡しやすいんだよ」


 前に行ったほうが選手はそばで見られるけど、確かにこれくらい高い位置は、ピッチの全体像が把握しやすい。


 今までは好きな選手を目で追いながら、試合の一挙手一投足に集中つつ観戦していた。


 今日は西本くんと二人、ゆったりとした気持ちで観戦したい。


 「……いつもこの辺で見ているの?」


 「いや、一緒に観る人次第で。ゴール裏で観戦することだってあるし」


 ……確か彼女は、サッカーはほとんど興味がないって話していたのを聞いたことがある。


 日本代表戦をテレビで観戦するくらい、とも。


 それゆえFC北海道の話題は、彼女とは全くできないらしい。


 試合に勝った負けた以外にも、今年の展望だとか、エースストライカー・中澤のゴールシーンについて、中澤の高校時代の後輩である元日本代表・古田ヤスがFC北海道に来てからの急激な変化について……、などなどそんな話題を共有するなんて、絶対無理。


 私はその程度の話題なら普通にやり取りができるので、そんなこともあって西本くんと話す機会が増えていった。


 サッカーについて熱く語ることも多かった。


 それがまさか、今こんな関係になっていようとは、当時夢にも思わなかったのだけど……。
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