夢物語
 もう誰も、愛さない……。


 競技面で成功を収めるために、私が心に誓ったことが一つだけある。


 もう二度と恋なんてしないということ。


 あんな目に遭うのは絶対に御免だ。


 当時はつらかったし悲しかったし、周囲の人の裏切りに傷つき、何も見えなくなってしまった。


 そんな私を救ってくれたのが、この競技。


 競技に没頭すると、現実のつらいことから抜け出せることができた。


 それに、練習は嘘をつかない。


 練習を頑張れば頑張った分だけ、結果となって反映された。


 強くなれた。


 競技の世界内で、高いポジションも手にすることができた。


 二度と失いたくはない。


 ケガや加齢など、いずれどうしようもない障壁が訪れるだろうけど、プライベートにおけるトラブルは気を付けていればいくらだって回避できる。


 ……恋愛のようなつまらないトラブルで、苦労して築き上げた地位を失ってはいけない。


 それを信条に私は、その後再び誰かと恋に落ちることはなかった。


 絶対に誰も愛さないと、心に誓っていた。
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