鬼畜な兄と従順な妹
 それって、籍は入れないけど、事実上の婚姻関係を結ぶ事よね。いくらなんでも、ハードルが高過ぎるよ……

「ちょっと待って。幸子にはボーイフレンドがいるでしょ? 直哉君が」

「真一には嶋田さんのお嬢さんがいるだろ? そっちはどうするんだよ?」

 あちゃー。

「どっちも別れてます。だいぶ前に」

 お兄ちゃんも私も、シュンとうな垂れた。

「もう、あなた達ったら……」

「加代子、どうする?」

「そうねえ。いいんじゃないかしら? 二人とも18になったんだし」

「そうだな? よし、わかった。その条件を飲むよ」

 やったー! うそみたい……

 思わず私は、お兄ちゃんの腕に抱き着いてしまった。

「ただし、ちゃんと勉強をして、大学に進む事」

「はーい。同じ大学に入ろうな?」

「うん」

「それと……」

 母が言葉を発した。

「赤ちゃんはまだ作らない事。少なくても高校を卒業するまでは、出来ないように気を付けなさい?」

「はーい」

 赤ちゃんかあ。楽しみだなあ。

「もう遅いから、そろそろ引き上げたらどうかな?」

 なぜか、少し不機嫌気味な感じで田原さんが言った。

「独り身には堪えるよ、君達の会話は」

 なるほど、そういう事か。

 という事で、私達は別荘、兼アトリエを後にして、父が運転する車で家路に着いたのだった。


 以下、帰りの車中での会話。
 
「幸子、夢みたいだな?」

「ほんとだね。案外、本当に夢だったりしてね?」

「と言うと?」

「これは夢でさ、目が覚めたら、二人とも湖の底に沈んでた、とか」

「や、やめてくれよ。おまえ、怖い事言うなあ。今夜は眠るのやめとこ」

「私も寝ない」

「寝ないで何をする?」

「そりゃあ、アレしかないでしょ?」

「だよな?」

「朝までね」

「おまえ、意外とタフだなあ」

 きりがないので、この辺で……

(おしまい)
< 108 / 109 >

この作品をシェア

pagetop