鬼畜な兄と従順な妹
「泣くな、幸子。俺が何とかする」

「何とかって?」

「当たって砕けろだ。父さんって、案外軽い人だから、何とかなるかもしれない」

 私達は3人の所へ戻った。そしてお兄ちゃんは、テーブルを挟んで父の正面に座り、私はその隣に座った。お兄ちゃんは、何を言うつもりなんだろうか……

「父さん」

「ん?」

「父さんと母さんが偽装結婚で、ずっと俺を騙してた件だけど、俺はまだ許してないからね」

 え? うっそだあ。

「ちょっと待て。さっき、私達の事情は解ったからって、言ってくれたじゃないか?」

 うんうん、言ってたね、確かに。

「解ったのと、許す事は別でしょ、父さん?」

 そう来たか。お兄ちゃんって、理屈っぽいなあ。

「まあそうだが、許してはくれないのか?」

「許してもいいけど、交換条件があります」

 ん? 何だろう?

「どんなだ?」

「その前に、父さんは俺と幸子の事、家政婦の三田さんから聞いたよね?」

 今、それを言うの?

「あ、ああ。直接ではないが」

 あちゃー。三田さん以外の人も知ってるって事だよね。恥ずかしいなあ。

「じゃあ話が早いな。父さん達の偽装結婚を許す代わりに、俺と幸子の”事実婚”を許してほしい。これが条件です」

 ”事実婚”?
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