鬼畜な兄と従順な妹
「今から俺が言う事は、決まりみたいなもんで、お前には全部守ってもらう。まずは俺の呼び方だが、他人がいる時は”お兄ちゃん”でいいが、俺と二人の時は……”真一様”と呼べ」

「はい、真一様」

「よし」

 あ、もしかして私、褒められた?

 それにしても、やっぱりお兄ちゃんは”俺様”だわ。”真一様”だなんて、そのまんまじゃない。なんか、可笑しい。笑ったら怒られそうだから、笑わないけども。

「次は、その貧乏たらしい服装はやめろ」

 私はムッとして返事をしなかった。自分では結構気に入ってる服装なのに、”貧乏たらしい”だなんて、酷過ぎる。怒りたければ怒ればいいわ。私だって怒ったんだから!

「家政婦の三田さんに言っておくから、好きな服を好きなだけ買ってもらえ」

 ところがお兄ちゃんは怒らずに、そう続けた。ま、服を買ってもらうのは悪い話でもない、わよね?

「はい」

「俺の”素”の部分は、絶対、人に話すな」

 やっぱり内緒よね? お兄ちゃんと秘密を共有したみたいで、ちょっと嬉しいかも。

「はい」

「俺に何をされても拒むな」

 え? 何を言ってるの? ”はい”なんて、言える訳ないじゃない!
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