鬼畜な兄と従順な妹
 俺は、まずはホッとしたものの、怒りが沸々と湧き上がり、腰を伸ばすと同時に男の一人に蹴りを入れた。サッカーで鍛えた脚力で。

 そいつは「ゲホッ」とか言って吹っ飛び、俺は別の男の胸ぐらを掴み上げた。

「幸子に何をした?」

「な、何もしてません」

「嘘を付くな。何もしないで、こんなになるわけねえだろ!」

「そ、それは、コイツが先輩の顔をぶったからで、ぶ、ブラウスはあいつが……」

 俺は”コイツ”と言われた男を蹴り上げ、”あいつ”は既に吹っ飛んでるから、

「おまえも連帯責任だ」

 と言ってそいつを蹴り上げた。

 俺が膝を床に着き、幸子の顔を覗き込んでいると、男達3人は「ごめんなさい」と、泣きながら謝った。

「わかったから、消えろ。もうこんなバカな事はすんなよ」

 と俺が言うと、もう一度「ごめんなさい」と言って去って行った。

 幸子は頭を打っているかもしれないから、意識が戻るまで頭は動かさない方がいいだろうと思い、幸子の頭を撫でるだけにして、

「幸子、目を覚ましてくれよ。頼むから、幸子、幸子ちゃん……」

 そう声を掛けても幸子は目を開かない。やはり救急車を呼ぶべきだなと思い、スマホをポケットから取り出そうとしたら、

「直哉君?」

 幸子の声がし、見れば幸子はゆっくりと目を開いた。しかし、”直哉君”は、ないんじゃないの?
< 56 / 109 >

この作品をシェア

pagetop