鬼畜な兄と従順な妹
 一日の授業が終わり、もしかするとお兄ちゃんが来るかもと期待しても、やっぱり来る事はなくて、結局は直哉君と帰る日が続いていた。

 あの体育館の一件があった夜、お兄ちゃんは私にとても優しくしてくれたのに、次の日からは一転して冷たくなってしまった。冷たいどころか、私を避けてるんじゃないかと思う。

 私、何か嫌われるような事をしたのかな。それとも、私のお兄ちゃんへの想いにお兄ちゃんは気付き、深みにはまらないように、わざと私を遠ざけているのかもしれない。

 どちらにしても、お兄ちゃんは私と普通の兄妹になろうとしてるんだと思う。それは解るのだけど、私もその方がいいんだって、理屈では思うのだけど、お兄ちゃんを想う気持ちを抑えられない。

 私は、どうしたらいいんだろう……

「幸子ちゃん、考え事かい?」

 横を歩く直哉君に言われてしまった。私ったら、もう駅の真ん前に来てるのに、ずっと無言で歩いていたらしい。もちろん、お兄ちゃんの事を考えていたから。

「電車に乗る前に、君に言いたい事があるんだ」

 改札の手前で直哉君はそう言い、私達は通行人の邪魔にならないよう横に移動した。

 直哉君と私は帰る方向が同じだから、数駅だけど一緒に電車に乗る。でも、電車の中では話しづらい何かがあるみたい。

「俺、こういうのは苦手っていうか、もしかしたら初めてかもだけど、俺とその……付き合ってくれないかな?」
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