異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
三番勝負②
私は一枚目を捲った。
問題は……うん、やっぱり1枚につき50問。
上から順番に見ては書き、見ては書きを繰り返す私の横では、激しい音が鳴っていた。
大原さんのそろばんを弾く音が、シンとした室内に異様な緊張感をもたらしている。
観客の皆さんは、それと対照的に動きのない私を見て、きっとこう思っているはずだ。
わからなくて困ってるんだな、と。
もちろんそんなことはないんだけどね。
パチパチパチパチ。
………………………。
パチパチパチパチ。
………………………。

そろばんの珠の音しかしないお遊戯室で、10分という短い時間はあっさりと過ぎ去った。

「はい、やめっ!!鉛筆を置いて!」

御姉様の声に、私達はふぅと溜め息をついた。
そして、問題は手早く回収され集計作業に入る。

「すずなさん、あなた諦めるのが早いわよ?」

「は?」

「うふふ、だって、何もしていなかったじゃないの?」

ああ、そう見えたんですね。

「してなくはないですよ?一生懸命、問題を解いてましたけど?」

「まぁ!見てるだけで計算が出来ればそろばんなんていらないわよね?」

ええ。そうですね。いらないですね。
尚も、うふふふと笑う大原さんの横で、私は脳の使いすぎによる糖分不足に陥っていた。
甘いもの食べたいよぉ!
その心の声が響いたのか、まさに天の助け!!
熱いお茶とお茶菓子が出されたのだ!
お茶菓子は大福で、文化祭のバザーで作られたもののようだ。
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