異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
三番勝負④
大原さんの選曲はエルガーの『愛の挨拶』。
意外です!!
外見からはちょっと想像つかなくて、私驚いてしまいましたよ。
もっとこう、ババーンと始まるのかと思って構えてたんですけど、完全に裏をかかれてしまった!
うーん……これって提督さんへ届ける愛の想い、なのかな?
優しい旋律、問いかけるように流れるハーモニー。
大原さんの優しい部分(きっとあるはず)が、このピアノに現れている気がする。
会場を見ると、審査員も観客も目を閉じて聞き入ったり、頷きながら聞いたり、様々な反応で楽しんでいた。
強面の軍人さんさえも、優しい顔になっている。

私は大原さんの演奏を聞きながら、自分の選曲をもう一度吟味した。
「愛の挨拶」で来るとは思わなかったから私、「愛の夢」にしようと思ってたんだけど。
完全に二番煎じになっちゃうから、違うのにしないとなぁ。
…………大原さんが「愛」でくるなら、やっぱり対抗するなら「別れ」。
「別れ」と言えば……あの有名な曲しかない。
「奏太の子守唄」という別名がついた曲だ。

私の選曲が確定したところで、「愛の挨拶」の演奏も終わった。
会場は割れんばかりの拍手に包まれる。
その喝采を浴びながら、大原さんはくるっとこちらを振り返り、ふふんと笑った。
そんな彼女に私も立ち上がり大きな拍手を送った。
だって、本当に素晴らしかったもん。
すると、大原さん、何故か顔を真っ赤にしてツカツカとこちらにやって来るじゃないですか??
えっと?私、また何かやらかしました??
< 112 / 188 >

この作品をシェア

pagetop