異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
三番勝負⑥
「魂が揺さぶられる素晴らしい演奏だった!」

提督さんはそれそれは熱く言った。
ありがとうございます、と答えた私は、そのあと心の中でこう付け加えた。
魂が揺さぶられたんじゃなくて抜かれたの間違いでしょ。と。

「本当はもっといろんな感想があるんだ。だけど、うまく言葉に出来ない。行動でならいくらでも表現出来るんだが……」

「行動で?例えば?」

あ!余計なことを言ったかも!
と思った時は遅かった。
提督さんは私の手の甲に、チュッと口付けたのだー!
ひぃーーー!
昭和日本男子のくせに、何てことするんだー!!

「柔らかい手だ。この手であの素晴らしい演奏をしたかと思うと……ああもう思い出すだけで意識が飛びそうだ」

それは変な病気ではないのかな?
脳神経外科を受診するといいですよ。

「えー、それは言い過ぎですよ?普通に弾いただけなので」

私の手は、まだ提督さんの手にガッチリと掴まれている。
どうやら暫く離す気はないらしい。

「そういう奥ゆかしいところ。君は大和撫子の鏡だな」

はぁ、あの、巷ではビッチと言われておりますが?

「本当に!奢らず、でしゃばらず、慎ましやか。セ……お嬢様は大和撫子です」

少尉さん?それ?誰のこと?
私のことじゃないよね!?ね!?
それとちょいちょいNGワード、漏れてるから!!

「大和……撫子……ははは、恐れ入りまぁす……」

蕩ける笑みの提督さんと、輝く笑顔の少尉さんに挟まれて、私は仕方なく愛想笑いを振り撒いた。
相変わらず提督さんは手を離さないし、少尉さんはこれでもかと誉めまくる。
もう……評価が甘すぎる。
身内贔屓も甚だしいですよ!
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