異世界の巫女姫は、提督さんの『偽』婚約者!?
三番勝負………終了!
「始めっ!!」

二回目の御姉様の合図が響く。
背の高い大原さんは、きっと面が得意なはず。
誘わなくてもそのうち面を打ってくる。
その時を待てば………。

「メーーーーンーーー!!!!」

きたっ!!
上から振り下ろされる大原さんの竹刀を弾き返し、素早く一歩踏み込んで!!

「どーぅっーーー!!」

大きく胴を打ち抜く!!

「一本!!!それまでっ!」

赤旗、三本が素早く上がった。
それまで、応援で賑やかだった会場はシーンと静まり返っている。
一番前の席で見ていた提督さんでさえ、ぽかんと口が開いていた。
その中で一番最初に動いたのは、5才組の子供だ。

「スゲーー!!何だあれ?」

「カッコいい!ぼくあんなのしたい!!」

ひろとくんとりょうくんが顔を見合わせて熱く語る。

「何言ってるの!!私が最初におねーさんに教えて貰うんだから!」

と、サキちゃん。

三人は我先にと前に詰め寄り、私の周りに群がって竹刀で遊び始めた。
そこに戦い終えた大原さんもやって来て、私達は改めて固く握手を交わした。

「完敗よ。なんて強いの?こんな腕前なら軍部に推薦されるわね」

「いや、それは遠慮したいです……」

だって、軍部怖い人一杯いるもん!
と、私は結城大佐を探したけど、彼はもう影も形もなかった。
道理でブリザードが止んでるわけだ。

「ふふ、ならここで子供達の剣術指導とか?それもいいかもしれないわね」

「そうですね、それが無難かなぁ……」

そう言って私達は顔を見合わせた。

「すずな、お疲れ様。頑張ったな」

そこへ今度は放心状態から解放された提督さんがやって来た。

「あ、はい。頑張りました!楽しかったです!」

元気良く言う私の側で、大原さんは少し居心地が悪そうに俯いた。
たぶん、提督さんのせい。
顔を会わせにくいのかも。
この二人、一回ちゃんと話した方がいいよね、絶対。

「あの……お節介とは思いますが、提督さんも大原さんも話し合った方がいいかと思います。せっかく同じ船に乗ってるんですから、思ってることぶちまけてしまいましょう?」

「思っていることを………?」

「ぶちまける……か」

提督さんと大原さんは顔を見合わせる。
初めて見たこの場面に、私は少しドキリとした。
それは、もしかしたらこの二人がまた元サヤに収まることもあるかもしれないと思って……。

「雪江、少し話そうか?」

「………そう、ね」

言葉少なに会話を交わすと、2人は会場を後にした。
もし、二人が元サヤに戻ることがあるんだったら、私はあの部屋にはいられないんだなぁーなんてことを考えて……心のどこか深いところで何かが刺さった気がした。
なんだかモヤモヤするし、イライラする。
何か悪いもの食べたのかな?
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